企画書の書き方

フレームワーク。日本語で「枠組み」のことである。なにか作業をしたり新しいことをはじめる時には、その分野のフレームワークを知っていると効率的である。言い換えればテンプレートであり、ひな形であり、つまりは過去から積み上げたノウハウから共通部分を抜き出したものである。

私が今いるカイシャに 10 年勤めてきて、この会社の悪い面はあまりにも多すぎるのでここでは割愛するとして、得たものとして述べたいと思う。

もし、自分の子どもがこの内容を理解できる年齢になってしかも本当に理解できるのなら、教えてあげたい(が、きっとそれは無理だから独り言メールにしておこう)。

(QCストーリー)

QC とは、Quality Control クオリティ・コントロールの略で、訳すと「品質管理」である。主に製造業=メーカーが取り組んできた品質改善活動のことであり、海外に広く知れ渡った日本語「カイゼン」はここから来ているともいえる。ゆえに、日本の高度成長の源泉ともいえる。

具体的に何かというと、職場単位でグループ=小さなサークルを作り、どんなに小さなコトでもいいから、職場で問題になっていることを解決するにはどうしたらいいか考える、というものである。3ヶ月~6ヶ月くらいで成果をはかってみる。カイゼン内容は、聞いて驚くが「呼び出し音 3 回以内に電話に出るのにはどうしたらいいか」とか「会議の時間を減らすにはどうしたらいいか」などのテーマから、もっと重いテーマまで様々である。短期間で活動してそのカイゼン効果を狙うので、自ずと小さなテーマとなる。活動した結果はサークル同士で発表しあって、優秀な活動をしたサークルは「全国大会」に出場したりする。

私が勤めている会社は、私が入社した時は当時の社長がこの方法をソフトウェアの世界に持ち込む、として全社をあげて取り組んでいた。

正直言ってこの取り組みはソフトウェアの世界にはあまりなじまなかったと、誰もが考えていたと思うし、今はほとんど QC などというコドバは聞かなくなったので、やはりなじまなかったのだろう。

しかし、私は 「QC ストーリー」 なるものは、ふだん生活する上でも非常に役に立つものではないかと常日頃から思っている。気が付けば何か問題があったら私の頭の中はすぐに QC ストーリーのフレームワークに沿って考えるようになっていた。

  1. テーマの決定(何の問題を解決し、取り組むかテーマを決める)
  2. 現状把握(何が起こっているか現在の状態を把握する。箇条書きにする。)
  3. 要因分析(問題と、その最も重要な原因を追究する)
  4. 対策の立案と実施(対策を考え、活動する)
  5. 効果の確認(一定期間活動した効果を確認する。ここで統計学を使うのが QC の特徴)
  6. 歯止め(ダメ押し)
  7. まとめと今後の課題(反省とやり残したことについて述べる)

たとえば、授業を聴いているのにテストでいい点が取れない、なんていう悩み(上でいうテーマ)にも適用できる。

(企画書の書き方、盛り込む要素)

これは、今まで 10 年会社に勤めてきて、6 年目くらいで当時の課長代理の先輩社員に企画書の作り方を鍛えられたものから学んだことである。

  1. 社内調査(=社内ヒアリングは必須)だし
  2. 他社技術(サービス)との比較は必ずする
  3. サービスイメージがしっかりしていれば文句はでない
  4. サービスイメージを実現するために必要な機能とは何かが洗い出してあって
  5. 実装はどのようにすればよいのかもかければ○(マル)。
  6. 役割分担と
  7. スケジュール(荒いレベルでよい)あたりはお約束的に必要。
  8. 以上が、担当者レベルで用意できればよいと思う。

  9. 予算=要員計画と費用

    は、課長代理レベルだと必須。

このたった 8 つのノウハウは教えてくれる人がいないとなかなか身につかないだろうと思うし、人間とはそもそも自分にとって 「よいこと」 は、人に教えたがらないものだ。

しかしこの 8 つのノウハウを理解した上で盛り込んだ企画書を書けば社内ではだいたいプロジェクトとして通ると思う。

ちなみに企画書はマイクロソフトの 「PowerPoint」 というソフトで書く。昔で言う OHP を PC の世界に持ってきたものと思えばよい。

マイクロソフトオフィスは Word と Excel が有名で、PC を買えばほとんどの場合付いてくる(オフィスパーソナル)が、PowerPoint はオフィスプロフェッショナルじゃないと付いてこない。企画書を書く上でこの 「パワポ」 を使いこなせる、というか、やはり 「絵心」 のある人は強い。システムエンジニアに求められるものとして、技術だけでなくそれをアピールする力だ。マイクロソフトのビルゲイツが世界一のお金持ちになれたのもこのソフトのおかげだ。彼は技術力もあったが、それをアピールする力=マーケティング力に長けていたのだ。悪い言い方をすれば人をだます力だ。

この企画書を作るソフトは、Excel が表計算ソフトと呼ばれるように、一般的には 「プレゼンテーションソフト」 と言う。マイクロソフトは OS 分野においてウィンドウズでかなりのシェアを持っているが、それでも 100% のシェアではない。世の中には Mac OS もあるし、Linux もある。しかしながら実はこのプレゼンソフトの分野で彼らはほぼ独占だと思われる。

前にも書いたかもしれないが、マイクロソフトのマーケティングとは、まだできてもいないソフトを、あたかもできたソフトのように 「プレゼン」 し、コトあるごとに発表してきた。

ソフトの開発スケジュールを 「ロードマップ」 と呼んでいるが、それらロードマップに書かれたスケジュールを彼らが守ってきたことはほとんどなかったはずである(2000 年前までは。最近は心を入れ替えて企業イメージを良くするのに必死になってるように見える)。

たとえば、93、94 年当時ビルゲイツが 96 年にリリースすると豪語していた次期ウィンドウズコードネーム「Cario」は、96 年になっても出てこなかった。それは 4 年遅れの 2000 年になって 「ウィンドウズ 2000」 として発売されたが、結局 Cario の計画とは違ったものになっていた。このように公約をまったく守ったことがないマイクロソフトだが、だから嫌われる、と同時に、なぜか人々はだまされてきたのだ。これは PowerPoint のマジックだ。PowerPoint のきれいなスライドに書かれたまだ企画段階のソフトを誰かが「スライドウェア」と呼んでいるのを以前ウェブでみたことがある。これは本当に言い得て妙だ。

閑話休題、上の 8 つのコツをつかんでから 1998~2003 年の間に私は、モバイル、CRM、ケータイ公式サイト、プレゼンスシステム と、だいたい 1 年くらいおきにほとんど私が企画書を書いて、それらは実際にプロジェクトになってきたから間違いない。

ちなみに一番最初のモバイルのプロジェクトはプロジェクト化したものの実際は私ひとりのプロジェクト=ひとりプロジェクトで予算がつかず、ゼロ円。他の協力してくれる担当からソフトを買ってもらったりしていた。
今は、担当で億単位のお金がついていて、モノが自由に買える(あの iMac までも)ほどになり、思えばずいぶん進歩したな、と思う。

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Posted on 2003-07-17 by yas |