Bruce Hornsby & The Range 『The Way It Is』

  日本ではブルース・ホーンズビー(Bruce Hornsby)などというアーティストはおそらくほとんど知られていないだろう。

  彼は最初、ヒューイ・ルイス&ニュース(Huey Lewis & The News)に気に入られて彼らの前座としてツアーに出ていた。『Jacob's Ladder』 なら聴いたことある人もいるだろう。また、ドン・ヘンリー(Don Henley)の『The End of the Innocence』や、映画『バックドラフト(Backdraft)』のテーマ曲『The Show Goes on』など、洋楽好きなら一度は聴いたことのある曲、それはすべて彼の作曲である。

  さて、そのブルース・ホーンズビー(バンド名は『Bruce Hornsby & The Range』)のデビュー曲『The Way It Is』は、1986年当時不況にあえぐアメリカを嘆いた歌。こんな歌詞でビルボードヒットチャート1位なるのだからアメリカってすごい国だなと思った。このような社会情勢を歌った曲はアメリカでヒットするのは珍しくないのだが、日本人の私としては衝撃的だった。実は歌詞は後から内容を知ったのだが、歌詞以前に『The Way It Is』はその Jazzy なピアノが印象的な曲である。サビの和音(add9)を自分の得意技として明確にポップに持ち込んだ(そしてヒットした)のは彼が始めてであろう(その後、いろいろなアーティストが add9 を真似することになる)。私が好きなビリー・ジョエルを超えたと思ったアーティストである。

  彼のアルバムは 1〜3作目までは『Bruce Hornby & The Range』として発表しているが、『Bruce Hornsby』のソロアルパムとして発表した 4作目からは作風がガラリと変わる。彼のアルバムを比べてみるとわかるのだが、簡単にいうと1〜3作目のアルバムはいわゆる「売れセン」を狙っていたことがわかる。厳密にいうと1、2、3作と進むに従って少しずつ売れセンでなくなってくのだが、4作目以降では「自分のやりたい音楽は本当はこうだったんです」と、良い意味でも悪い意味でもファンを裏切ったアーティストでもある。商業的に成功した後、本当に自分の好きな音楽をやれている彼は本当にうらやましいし、そうありたいという私にとっての目標でもある。

The Way It Is

Standing in line marking time-
Waiting for the welfare dime
'Cause they can't buy a job
The man in the silk suit hurries by
As he catches the poor ladies' eyes
Just for fun he says "get a job"

    That's just the way it is
    Some things will never change
    That's just the way it is
    But don't you believe them

They say he little boy you can't go
Where the others go
'Cause you don't look like they do
Said hey old man how can you stand
To think that way
Did you really think about it
Before you made the rules
He said, Son

    That's just the way it is
    Some things will never change
    That's just the way it is
    But don't you believe them

Well they passed a law in '64
To give those who ain't got a little more
But it only goes so far
Because the law don't change another's mind
When all it sees at the hiring time
Is the line on the color bar

    That's just the way it is
    Some things will never change
    That's just the way it is
    But don't you believe them

Artist: Bruce Hornsby & The Range

わずかな生活保護をもらうために
列に並んで時間をつぶす
だって仕事は買うことができないから
シルクのスーツを着た男が足早に通り過ぎる
貧しそうな老婦人と目が合い彼は吐き捨てた
「仕事しなよ」

    そんなもんさ
    きっと何も変わらない
    そんなもんなんだ
    それでも奴らを信じるのかい?

奴らは言う「貧乏人には行けないところがあるんだよ、
だってその場所にはふさわしく見えないだろう?」
老人は言った「お前たちはどうしてそんな風に考えられるんだ?」
彼は続ける、「ルールを作る前に一度でもきちんとそれを考えてみたことがあるのか?」

    そんなもんさ
    きっと何も変わらない
    そんなもんなんだ
    それでも奴らを信じるのかい?

奴らは '64年に最低賃金法を通したが
今じゃ影も形もない
だって法律で人の心までは変えられないだろ?
雇われてるときに見えるものすべては
階級の色なんだから

    そんなもんさ
    きっと何も変わらない
    そんなもんなんだ
    それでも奴らを信じるのかい?

訳:エコノ研究所管理人

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