内容は asahi.com より無断転載。
この論文は具体的な数字を含み、非常に有用であるため、このブログに記録することとした。
Q.新障害者プランとは?
A.地域生活の移行を促進、「脱施設」実現には課題
事故や病気で体が不自由になったり、学校や職場のストレスなどから心の調子を崩したり。こうした人が身近にいませんか。
人生は、いつ何が起きるかわかりません。厚生労働省によると、国民の20人に1人、約600万人が障害をもっています。内訳は、体に障害がある人が約352万人、知的障害者は約46万人、精神障害者は約204万人です。役所が把握し認めた人だけなので、実際にはもっと多いとみられます。
政府は昨年末、障害者施策の新たな基本方針を示す「新障害者基本計画」(03~12年度)と、前半5年間の数値目標を書いた「新障害者プラン」を決めました。最大の特徴は入所(院)中心から「脱施設」を打ち出したことです。
現在の障害者プラン(96~02年度)は、障害のある人も地域で暮らせるようにする「ノーマライゼーション」を掲げながら、実際は入所施設を増やしてきました。折れ線グラフを見てください。
70年代から北欧や米英を中心に「脱施設」の波が起こりました。スウェーデンでは、地域で住むための「グループホーム」や日中を過ごす「デイサービス」、ホームヘルプなどのサービスを整え、施設で暮らす人はもうほとんどいません。こうした流れに逆行するように、日本は施設をつくり続けてきた特異な国です。
入所施設は、福祉サービスが何もない時代に、「親亡き後」を心配する家族の切実な願いによってつくられてきました。いまも入所待機者がいるとの主張もありますが、それは地域で支える体制の貧しさのあらわれでもあります。
46万人いる知的障害者のうち、施設で約13万人が暮らしています。円グラフのように半数が10年以上で、子ども時代から30年暮らしている人もいます。厚労省研究班の調査では、いったん知的障害者施設に入所して、地域に出られた人は、全体のわずか1%です。
施設から出るためには、在宅サービスを増やさなくてはいけないのに、入所施設に、予算全体の7割を使い続けてきたからです。
作業所などの全国組織「きょうされん」の調べでは、グループホームが一つもない市町村が7割。厚労省の調査でも、ホームヘルプを実施していない市町村は、身体障害者向けで3割、知的障害者向けで7割に達しています。
新基本計画は「本人の意向を尊重し、入所(院)者の地域生活への移行を促進する」、新プランでは「入所施設は真に必要なものに限定する」として、脱施設の方針を示しました。精神障害者については初めて、10年で約7万2000人の社会復帰目標を出しました。 実現には、大胆な目標値と予算増が必要ですが、「新プランの内容では焼け石に水」と、関係者に落胆が広がっています。
例えば、住まいとなるグループホーム・福祉ホームの上積みは、5年間で1万5000人です。
日本障害者協議会の藤井克徳常務理事は「全国の市町村数(約3000)を考えると、各市町村で1年にたった1人。他の目標値も、脱施設には無意味に近い水準」と目標の低さを嘆きます。
障害があっても、まちでふつうに暮らす。多くの国が実現し、本来当たり前のことが、日本では一部を除いていつ実現できるか、分かりません。あなたのまちはどうですか。