今回は、iモードの将来について考えてみたい。
すでにドコモは、香港の最大のケータイ会社であるハチソン・テレフォンカンパニー社 (Hutchison Telephone Company Limited)に、iモードのコンテンツが提供できるように技術支援を行っている。これによって HTCL は、2000/5 月下旬から、iモードコンテンツサービスを開始するようだ。他にもドコモはオランダのケータイ会社に5,000 億円を投じて資本参加をするようだ (NTT 法により、株式交換にすると外国人の持ち株比率が上がってしまうので、できないそうだ)。
今後、日本が世界に先駆けて開発した技術が、世界に輸出されていく。しかも、ケータイのような小さなデバイスを作るのは日本のお家芸である。海外に行ってケータイを見てみればわかるが (特にアメリカ)、とにかくゴツい。確かに、ヤツらは手が大きいから、日本で売っているようなケータイを操作するのはちょっと不便かもしれないが、それにしてもデカイ。ケータイに使われる液晶、IC やコンデンサなどは日本のメーカーにしか作れないものもある。iモードは、病んだ日本の経済を復興させる契機となる可能性がある。
今年の終わりくらいから発売される iモードのケータイで Java のプログラム (アプレットという) が動くようになる。私は 1996 年からひたすら米国サン・マイクロシステムズが開発したJava を追いかけてきたが、その最も注目して来た技術である Java がなんと iモードのケータイに載るのである。iモードに Java が載ると考えただけでワクワクする (アクセスという会社をご存知だろうか? iモードに載る Java とブラウザはこの会社のものである)。 大前研一氏が 「もう頭がパンクしそうだ。iモードのサービスがどんどんひらめいてくるから」と雑誌 SAPIO に論文を書いていたが、私も、Java が載ると考えると、ケータイであれもできる、これもできるとアイディアは無限に広がる。
昨年度インドの会社と一緒にシステム構築してきたのだが、ここでの開発の技術基盤は Java であり、インド人 IT 技術者が最も得意とするところは Java であるから、日本の iモードとインド人の組み合わせは世界最強のように思う。
このように、iモードは Java を巻込みながら発展し、実は Java から見ても、PC 以外の小さな単体のデバイスに載るのは iモードが世界初の試みなのである (そのため、Java の関係者からは成功するかどうか非常に注目されている)。
実際に、Java が iモードに載れば、インスタントメッセージシステムのようなものは簡単に実現できるし、株価のリアルタイム表示 (あらかじめ設定した値動きがあったときに自動的に教えてくれる)、リアルタイムオークション、オンラインショッピングにおけるセキュリティの向上など、おおよそPCでできているものは実現できるだろう。
W-CDMA というのがキーワードとなるのだが、デジカメもケータイに取り込まれていくだろうし、音声入力は当然、そのうちケータイも PC と同じくらいのスペックを持つようになるに違いない。
私が今の会社に入社したとき、7 年後の自分がインド人と一緒に働いている姿は全く想像できなかった。だから、これから 5 年後のことは想像よりももっと大きく発展しているかもしれないし、そうでないかもしれない。
航空券のチケットはケータイになり、ゲートを通過するときはケータイを見せるだけ。ケータイが財布になり、主婦は、レジでなにやらケータイをバーコードにかざしているかもしれない (ケータイにクーポンが表示されているのである、ケータイにはバーコードが表示される)。もはや、銀行の ATM はケータイの中にあり、資金移動は ATM の前で操作するのでなく、ケータイを操作する。人間は、その場所にいかなくても、判断するだけでいいのである。音楽もケータイにダウンロードするようになる。
私は 4 年前 (1996 年)、自社内で 「情報が、人についてくる」 というコンセプトを提案したことがある。4 年前は、「そうなったらいいな」 というだけで、どのように実現してよいのかわからなかったが、思わぬところにこの糸口を見つけることができるのかもしれない。