パラダイムシフトで忘れてはならないのは、アップルが開発した iPod の存在だろう。これは、手のひらサイズのウォークマンタイプの 「箱」 に、何千曲も入れることができるようになったものだ。この箱の中には、東芝製の薄型 HDD が入っており、技術的なブレークスルーは日本の企業が開拓したもので、アップルはそれをデザイン (設計) し、マーケティングし、出来上がった成果物を市場に流通させた、といってしまえばそれまでだろう。というのも音楽をヘッドフォンで効くことにはウォークマンの時代からなんら変わっていないから、これだけ取り上げてもパラダイムシフトは実感しにくい。
しかし、 iPod とセットの 「iTunes」 というソフトは、このソフトを通して、楽曲販売の 「店」 を開くことに成功した。
以前、誰か (スタパ斎藤?) が、、音楽というものは 「音」 なのだから、それが記録されている形態は、レコードでも、 CD でも、MD でも、ビデオテープでもよい。それが再生できればよい。であるから、目に見えない音楽は、目に見えるものに記録しておく必然性は、技術的な背景以外には、何もない。つまり、ネットが発達すれば、音楽というものはすべて電子化 (データ化) してネットの中に置いておけるのだ。…言っているのをウェブだか雑誌で読んだことがある。
まさに時代は、アップルの言う 「Goodbye MD」 となっている。つまり、音楽はネットにいつでも置いておき、人間はそれを自由に引き出すことが可能となった。もう少し言うと、このアイディアは誰でも思いつくものだが、実用になり、我々の生活に入り込んで来た、といって良い。
さて、今回海外赴任するにあたり、私自身のもっている CD をどうしようか、ということになった。枚数で言うと (後から分かったのだが) 300 枚くらいあった。これを全部アメリカに持って行くこともできるが、果たしてすべてアメリカで聴くだろうか?まぁ、音楽というものは不要不急のものであるから、別に全部持って行かなくてもお気に入りの CD を選んで持って行けばよい、ということに普通はなると思う。
しかし、時代は変わったのだ。
どうするかと言うと、 CD 300 枚に刻んであるデータをすべて PC の HDD の中に入れてしまうのである。入れるというのは至って簡単で、Mac に CD を入れれば自動的に曲名をインターネットに検索しに行き、さらい自動的に HDD に曲名 (もちろんアルバム名、アーティスト名も) 記録してくれる。記録は、 CD 1 枚につき遅くて 10 分くらいだろうか。記録が終わると自動的に CD が Mac から出てくるから、次に記録する CD と入れ替えて行けばよい。単純作業ではある。ちなみに、この 「曲名をネットで検索」 というのは CDDB といい、世界中の CD の情報が集められているようだ。これはすごくよくできていて、私がインドで自分のお土産に買って来た CD とか、日本で路上で演奏していた人たち (デビューしてない) の CD まできちんとアルバム、アーティスト、曲名を当てていた。
今までは、あまりにもデータの量が多過ぎて*技術的には可能だがコスト的に (それだけ大容量のデータを入れる HDD を買ってこなければならず、それは高価だった) 実用面から言って入れられなかった*ということだ。しかしこれは、今年の 4 月 (2004/04) から、あまり IT 業界の中でも多く取り上げられていないが、アップルは 「ロスレスエンコーディング」 という、データを 「圧縮」 する技術 (圧縮=つまり、膨大なデータを、縮める技術) を開発した。 「MP3」 という言葉を聞いたことがあると思うが、デジタルオーディオの世界では音楽を聴くといえばこの MP3 という形式のファイルを指すことになっている。MP3 とは、MPEG LAYER3 の略で、音 (音楽) を人間が分からない程度に間引いて、データを圧縮する方式である。誰でも目の錯覚とか経験したことがあると思うが、耳も錯覚をする。その錯覚を利用すると、1つの曲のすべてのデータを記録しなくても、 「音を間引いて記録」 することができるのだ。この理論をもっと詳しく知りたければ、ググってください。
で、アップルの 「ロスレスエンコーディング」 とは、 CD の音質はまったく崩さず、データを圧縮するというもので、 CD から MP3 のデータに変換すると、どうしても音質が CD よりも悪くなるという欠点があったが、 「ロスレス」 の方では、そうならずに圧縮できるようになったのだ。この圧縮率は、元の CD のデータ (オーディオ CD は通常 640MB) よりも 20、30%〜50%くらいまでだと思う。なので、HDD の容量も、まともに CD をすべて HDD に記録するよりも圧縮率の分だけ少なくて済むので、コストもそれだけ安くなるということだ。
で、結論。300 枚の CD は、結局、1 つの HDD になった。この HDD は、https://www.iodata.jp/prod/storage/hdd/2003/hdl-u/ で、約 42 (W) × 265 (D) × 131 (H) mm (突起物含まず) = 1,458、質量約 1.4kg である。 CD は、142 x 125 x 10 mm = 177.5
(177.5 × 300 =53,250) よって、体積比にして1/36のスペース節約となった。重さに関しては、測ってないのでよくわからないけど、ちょっと大きめのビデオテープくらいの大きさの HDD にして、片手で 300 枚の CD が持てると思ってください。日本で整理していたときは、プラスチックの衣装ケースみたいなのに 60 枚ずつ入れてそれが 5 箱あった。
また、副次的なこととして、iTunes に曲を入れると、自動的にちょっとした統計情報を出してくれる。約 300 枚の CD は、今私が持っている曲数で言うと 3,358 曲であり、これを全部聴く (もちろんぶっ続け) には、10日と 8 時間 36 分 22 秒かかるらしい。 (この中には数枚か妻の CD が入っているのだが) 自分の人生でこれだけの曲は聴いてきたのだな、と再確認した。これだけ聴けばプロフィールの趣味の欄に 「音楽鑑賞」 と書いてもいいような気がする。
そして、HDD の容量は、96.60GBだから、この容量を納める HDD は、今は 1.5 万円 (カカクコム 調べ) も出せば、おつりが来るだろう。
ちなみに、300 枚の CD は、今はトランクルームに預けて来ている。
このような形態で C Dの曲を持つことは、現代版のジュークボックスであると言える。*音質を落とせば* iPod の最上位機種に 3,000 曲は収まってしまうから、まさに手のひらサイズに衣装ケース 5 箱分の音楽が入るのであった。上では 「 iPod はあまりたいしたことない」 みたいなことを書いたが、実はこうしてみると、すごいことなのである。音質が CD と同レベルになって手のひらサイズの iPod のようなものに入る日も近いと思う。
先月に、これまたアップルが出した AirMac Express というものを買った。
これは、iTunes の曲を、通常のオーディオアンプにつなげられるというものだ。これは無線 LAN 接続なので、つまり Mac とオーディオアンプにつながるスピーカーが別の部屋にあっても良いということだ (まぁ実際にはアパートの部屋は狭いので同じ部屋の反対側同士にある Mac とアンプを AirMac Express でつないでいますが)。
iTunes では、「パーティーシャッフル」 という機能を使っている。これは、自分の 3,300曲 あるライブラリの中から、ランダムに曲を選んでかけてくれるというもの。自分のお気に入りの曲に印をつけておいてそれらの曲が再生される頻度を増やすこともできる。このパーティーシャッフルを利用して最近は、すべての曲を聴き終えるのはいつか、と、楽しんでいる (8 月上旬からから家に帰ってから夜はほとんど毎日聴き続けて今まで 1,450 曲聴いた。まだ半分に行ってない。が、ここまで聴くと松田聖子 (しかも洋楽盤) の歌がいかに下手なのかがよくわかってしまった)。
あと 10 年以内には、これは、Mac からのコントロールからではなく、TV の画面を通してリモコンで選曲するようになると思う (今でも、そのような製品が少しずつ出ている)。