電話などのテレコムの世界において、電話会社は顧客がたとえばケータイ電話で「誰に、そしてどのくらいの時間、電話したか」を調べれば、それを元に頻繁にケータイで連絡を取り合うグループ───すなわち、友だちネットワークを把握することができる。
そして、いったんグループがわかれば、電話会社はこのグループ内の顧客に対して、グループ意識を持たせ
たプロモーション (販売促進) やサービスを実施することで、自社に利益をもたらす (ロイヤルティ) 顧客
を育てようとする取り組みが可能になる。
たとえばアメリカの MCI のフレンズ & ファミリーなど、現在ではテレコム系を中心とした多くの企業が取り組んでいる。このグループ特定には、近ごろはリンク分析 (Link Analysis) と呼ばれる方法が使われることが多い。
リンク分析とは、電話通話、FAX 通話、メールなど 2 者(または 1 対多)の間に発生する通信データの頻度に注目し、n 者間のつながりをグラフによってビジュアル化することで、互いに関係を持っている特定グループを発見する方法である。しかしこの方法では、特定のグループを特定できたとしても、そのグループにおいて他に影響を与えやすい 「オピニオンリーダー」 的人物の特定が難しい。そのため、特定されたグループの中で、特に 「誰を?」 中心にプロモーションを行っていけば良いか?の判断がつきにくい。より効率的かつ効果的なプロモーションを実施するためには、このグループにおいて最も影響を与えるであろう人物を特定することが望まれる。
この「オピニオンリーダー」の存在は、電話会社にとって大変重要である。なぜなら、オピニオンリーダーが解約してしまうと、それに伴って、そのグループ内の顧客も次々にやめてしまう可能性が大きいからである。
たとえば、 PHS とケータイの関係を考えてみよう。 PHS とケータイの付加サービスであるショートメッセージは互換性がない。ここで、今まで主に PHS を利用していたオピニオンリーダーらが、「来月からケータイに変える」 と言い出せば、グループ内の顧客らが「私も変えようかな」ということになる。 PHS かケータイどちらを買おうか迷っている潜在顧客(すなわちこの場合オピニオンリーダーの友だち)に対しても、「オピニオンリーダーがケータイを使っているから」という理由でケータイにする可能性がある。 PHS とケータイはもともと方式が違うが、ケータイ同士でも、日本ではドコモの iモードと、cdmaOne の違いがある。
このような「オピニオンリーダー」、そしてこのリーダーを中心とした「グループ」が自分の持つケータイ・PHS をどこの会社・方式にしようか、相談するようなメールのやりとりを私は目の当たりにしたことがある。実際の経験からもこの理論は現実性がある。
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以下は、そのオピニオンリーダーを割り出す手法である。
ゲーム理論で扱われるシャプレイ値の考えを導入することで、n 者間の関係を表すグラフの中で、最も重みのある (他に影響を与える) ノードを発見する。以下の特定グループ抽出手順、および、グループ内オピニオンリーダ抽出手順。